低オイルグロー燃料の特徴
低オイル燃料缶(イメージ)  日本科学模型安全委員会では、かねてより低ニトロ・低オイルグロー燃料の普及に心がけています。
 混合オイルタイプガソリンエンジンに比べ、従来の模型用グローエンジンの燃料は、実車オイル量の指定をはるかに越えていることは、エンジン模型をされているマニアなら既にご存じのことと思います。マフラーから出てくる排気は、オイルがベッタリという状態が常識になっています。これを実車に置き換えますと、完全なオイル上がり状態の現象です。かなり悪い状態でエンジンが運転されていると判断されます。
 しかし、模型エンジンの精度・材質の向上・最新化学オイルテクノロジーのおかげで、ついにガソリンエンジンに迫るオイル量が可能になりました。これが低オイルグロー燃料です。日本科学模型安全委員会では、昨年9月からのデータを採取しております。ここでは、そのデータを基に低オイルグロー燃料の特徴を紹介します。
 なお日本科学模型安全委員会では、10%以下のオイル分を含む燃料を
『低オイルグロー燃料』と呼ぶことになりました。



※左の燃料缶はイメージです

低オイルグロー燃料の特徴



  1.  ベアリング・ピストン等、鉄部品の錆は著しく減少します(新しいエンジンを使用した場合は、未だ錆の報告はありません)
     一度、熱にさらされたオイルは、酸化する傾向にあります。オイルの過度のエンジン内の残留は、ベアリングその他、鉄部品を錆びさせます。

  2.  始動性が良くなる
     点火に不必要なオイル分が減少し、メタノール分が増加していますので、始動性がより良くなります。

  3.  アイドリングが良くなる
     プラグの失火を招くオイル分が減少していますので、すばらしいアイドリング特性を示します。

  4.  ニードルセットのミスが少なくなる
     燃料の流量が良くなりますので、ニードル1コマに確実に反応します。オイル量が減少したため、オイルの粘度変化による地上でのニードルセットと、上空でのニードル差が少なくなります。

  5.  レスポンスが非常にスムーズになる
     燃料の粘性が低くなったため、キャブレターのスロー側と高速側の干渉が少なくなり、きれいな回転の変化と排気音もきれいなつながりとなります。このため、非常にスムーズなスロットルレスポンスを楽しめます。また、離陸直後のエンストの心配も少なくなります。

  6.  温度、季節によるエンジンの調整範囲が少なくなる
     オイル粘度の影響が少なくなるため、燃料の流量変化が少ないので、ほぼ一定したニードル位置で、1年中快適にエンジンの回転を維持できると考えられます。夏のデータがありませんので断定はできませんが、上記のとおり予想しています。

  7.  燃費が向上する
     オイルが低減し、その分メタノールに置き換わったので、キャブレターのスロー側と高速側の干渉が少なくなります。キャブレターの吹き返し等、エンジン不調の兆候がほぼ無くなり、燃費が良くなります。更に機体の軽量化も期待できます。(140クラススタント機においては、約100cc小さなタンクを使用することも可能となり、離陸重量を80〜100g軽量化できます。)
     また、年間のランニングコストもかなり削減できるでしょう。

  8.  飛行機の場合、燃料タンクの液面差による回転への影響が少ない
     燃料の粘度変化が少なく、ニードルも絞り込むため、燃料の加熱も含めた液面変化は少なくなり、離陸直後より快適なフライトを楽しめます。

  9.  オーバーヒート(ニードルの絞りすぎ)によるエンジンの損傷が少なくなる
     オイルが少ないので、オイルに蓄積される熱量は微量です。またメタノールの冷却によりエンジンがヒート気味でも、エンジンの損傷を最小限に抑えます。オイルの酸化も少なくなりますので、絞りすぎによるベアリングの錆が発生する確率も大幅に減少します。メタノールの冷却効果で、シリンダー内の温度は20度以上降下しているものと考えられます。

  10.  エンジン寿命が延びる
     エンジンの冷却性が増しますので、熱によるエンジン素材の傷みや劣化が少なくなります。

  11.  燃焼速度の向上
     過剰のオイル抵抗がなくなりますので、一定の排気音で機体をぐいぐい上昇させます。

  12.  RC模型の飛行安定感を増す
     きれいなエンジン燃焼は、振動の低減やスムーズなレスポンスの向上をもたらします。従来の燃料より、約150度低い温度で発熱を開始しますので、低速でもスムーズな回転が得られるものと思われます。操縦技術が向上したかのように模型が安定し、どなたでも簡単に引き出せます。

  13.  模型の汚れが少ない
     何といっても、マニアにとってこの項目が一番のメリットです。マフラーからの排油はごくわずかです。掃除の手間が省け、気持ちよく家路につくことができます。また、洋服や車等へのオイルの飛沫が極端に減少しますので、家族にも喜ばれることでしょう。

  14.  環境への影響が少ない
     世界的に騒がれている環境対策にも、少ない排油量で貢献することでしょう。芝生等への影響も激減するはずです。

  15.  人体に悪影響が少ない
     シリンダー内の温度が下がる分、排気ガスの有害物質を大幅に低減させます。

  16.  多気筒エンジンにも最適
     プラグを失火させるオイルが少ないため、片肺やエンストが多い多気筒エンジンにも最適です。キャブレターセットも更に精密に行えますので、非常にきれいなレスポンスを見せます。
     また、冷却性も増加しますので、熱だれが無く、エンジン寿命にも好結果をもたらします。エンジン音も振動の少ない澄んだ音になりますので、本来の多気筒エンジンの鼓動が聞こえてきます。

  17.  大型グローエンジンにも最適
     大型グローエンジンは1回の吸気量が多いために、従来のオイル分の多い燃料ではプラグの失火を招き、エンストを引き起こしやすいものでした。

  18.  スケール機に最適です
     煙が少なく実機感が出るばかりでなく、フルカウリングの多いスケール機では、エンジンの冷却が問題になります。多すぎるオイルは、熱を蓄積するばかりではなく、その熱による燃料の流量の変化が激しく、エンジンを不安定にし、やがてエンストを招きやすくなります。大切なスケール機だからこそ燃料の選択は必要です。




 現在、低オイルグロー燃料は7〜10%オイルが含有されておりますが、既に混合オイルタイプガソリンエンジンと同じ2〜3%オイルでのテストが始まっており、まったくエンジンのダメージは見あたりません。7〜10%タイプ低オイルグロー燃料は、まったく安心できるオイル量です。どうぞ安心して低オイルグロー燃料を使用してみてください。



低オイル燃料の使用感
 ここでは、低オイル燃料を使用された方々の感想をご紹介しています。
ニードルのピークがつかみやすい

F3A・1973年 日本人初の世界チャンピオン 吉岡 嗣貴 氏
 ラジコン技術(2000年2〜3月号)に連載された田屋恵唯 氏の記事により、低(量)オイル化燃料がクローズアップされてきました。  2年半前より、日本科学模型安全委員会が進めているグロー燃料の成分検査から「ニトロメタンを減らす」ことが排ガス中の公害物質の低減に一番役立つと分かりました。また「オイル」は草や葉の表面を覆い、呼吸困難から植物が枯れてしまう状況を作っています。このことから、「ニトロとオイルの減少」が環境に一番良い方向性を示しています。
 さっそく、飛行機用低オイルの30%、23%、15%ニトロ燃料をテストしましたので、そのインプレッションをお知らせしたいと思います。

(1)センセーションRS/YS FZ-91で使用
 デモ機のため、30%ニトロのみを使用。エンジンは古く、かなり使用したものです。今までは1-1/2回ニードルが開いており、ロードの大きい曲技を連続していると、だんだん回らなくなる症状が出るエンジンです。低オイルに変えるとニードルの反応が良くなり、1/4回程さらに絞り込むことができました。この結果、パワーが上がり、スロットル・レスポンスも実に良くなり、燃費も向上しました。エンジンが生き返ったようです。

(2)センセーション1400/YS FZ-53で使用
 デモ用としてニトロ30%を主に使用しています。30%ニトロではニードルは従来の1-1/2より91と同じくらい、1/4回絞り込みとなり、パワー、レスポンス共に向上しました。アイドリングも良好。15%では、従来燃料でニードル1-1/3回のところ、さらに1/2回絞り込むことができました。パワーは30%(ニトロ)の時とは逆で、ダウンが見受けられます。

(3)アラジンLt/OS32で使用
 こちらもデモ機で、エンジンは4年前の古いものです。30%テストでは、今までニードル1-1/2の位置から1/4回絞り込めました。(1)(2)は共に4Cですが、2Cの本エンジンも同様にニードル・セットでピークを探りやすく、パワーもアップした感じです。23%では従来品とのテストをしなかったのですが、パワー、レスポンス、アイドリング共に全く快調でした。15%では、(2)と同じで、パワーはダウン傾向。ただ、一般スポーツ・フライトとしては静かで非常にスムーズ、パワー減以外は素晴らしいと思いました。

総括として
 2C、4C共に高ニトロでパワーアップの傾向が見受けられます。従来燃料では、ニトロ量があるレベルから上では必要限度以上入っており、ピークでの絞り込みが不十分でしたが、低オイル・タイプはニードル・レスポンスが良く「絞り込むことにより、この余分なニトロが生きてくるのではないかな?」と考えます。
 低ニトロでのパワー減少は、アルコール分が多くなったために、ニトロの割合が対アルコールで希釈された(薄められた)ことによる結果と思われます。「それでは、単なるパワーダウンではないか」と考えるのは早計です。もと貴方の機体がアンダーパワーとなり、パワーを必要とするならば、1ランク上のニトロ%を選ぶと良いでしょう。このコストアップは、燃費の向上で帳消しと考えるのはいかがでしょうか。また、他のテスト結果では「チューンド・サイレンサー仕様」で15%を使用し、「パワーダウン」とお聞きしていることを付け加えておきます。
 エンジンそのものは、3台ともニードル・セットの変更のみでOKでした。スロットル・レスポンスは従来品より良好な場合が多く、排煙が少なく、何よりも飛行機の汚れが極端に少ないので、手入れが楽になり、気分良く飛行場を後にしました。
 現行の一般タイプの燃料は各社製とも完成されたもので、低オイル・タイプは誕生したばかりですが、単なる比較だけではなく、今後のラジコン模型界の社会性を含めて考え、進化させて行きたいものです。

ワンポイント・アドバイス
 (2)のテストで使用した古いYS FZ−53は、低オイル15%ニトロを使用したとき、スローからハイへの立ち上がりが遅く感じられました。以前聞いたことがある「レギュレーターのダイヤフラムシートを2枚に」というアイデアを試したところ、レスポンスは回復し、パワーも少々上がりました。上空で吹きが悪くなる症状にも改善が見られるようです。


今後の課題はオイルをどこまで減らせるか

日本模型航空連盟理事・R/C曲技委員会 委員長・豊田 安郎 氏
 23%ニトロと30%ニトロを配合したオイル分8%の低オイル燃料を、OS FS52エンジンを積んだスポーツ機でテストしてみました。まず感じたのは、排煙が薄いことと、ニードルのピークの“山”がつかみやすいこと。さらにニードルを従来よりも90度以上絞り込むことができ、燃費が向上したことです。スローからのレスポンスも良いし、パワー・ダウンなども見られない。理屈から言えばアルコールが増えた分パワーも増えるわけですが、目立ってパワー・アップしたというほどではありませんでした。しかし、総合的に見ると、従来の燃料に比べてはるかにメリットが多いと実感しています。唯一懸念しているのは「夏の暑さで、どのような症状が出るか」、「錆が生じないか」の2点だけですね。心配はないとは聞いていますが…。私にとってありがたいのは、やはり煙が少ないこと。煙が少なければオイルの飛散も少ないわけですから、機体が汚れない。以前はグラスターなどを使って手入れをしていましたが、低オイル燃料だと、飛行後にさっと機体を拭くだけでOKです。窒素酸化物の発生が少ない点も、環境面で大きなプラスだと感じています。  来年度のF3A/F3C日本選手権から、この低オイル燃料が義務づけられることになりました。最終的にオイルをどこまで減らせるかが今後の大きな課題となるでしょう。
素直な回転上昇で、艇速が伸びる。

少しずつニードルを絞って、体感的にパワーに変化がなくなったところで使用すれば、
従来と全く変わりなく、問題ないようです。


金森 定治 氏

ニードル・セットは慎重に…

 オイルの少ない燃料は,果たしてボートに使用出来るのでしょうか?
 「ラジコン技術」にも掲載されましたが,TAYAエンジニアリング社のテストでは,飛行機とヘリでは問題なく使用できるようです。
 ボートでも,ガソリン・エンジンでは,オイルは5%も入ってませんが十分に使用出来ていますし,以前読んだピコ21の取説には,8%のヒマシ油って書いてあったような記憶がありますので,8%オイル燃料が,まったく使用できないことはないんじゃなかろうか?
 そんな訳で,オイル8%,ニトロ30%の燃料でボートを走らせてみました。ボートでは,排気量の大きなエンジンはオイルを多目に使う傾向があるようですから,まずは小排気量のOS15CV‐MXでテストしてみました。
 テスト艇,OS15CV搭載のニトロファルコンは,JRMの長距離レース,MSクラスに使用しているものです。コスモ製のマリンスペシャル30%ニトロ燃料を使用,十分走り込んでいますので(2リットルほど),まずはセットを変えず,プラグのみ新品(OSA5)にしてテストします。
 燃料を入れ,プラグをヒートしてリコイル・スタータを数回引くと,簡単に始動しました。スローが幾分濃い感じになりますが,特に問題はなさそうです。水につけ走らせますと,ニードルが若干あまく感じます。
 手元に回収し,ニードルを30度ほど締め込みますと,今度は従来とまったく同じに走ります。スローが若干あまい感じはありますが,実用上問題ありません。2タンク目,ニードルを15度ほど締めますが,先ほどとあまり変化がありません。さらに15度絞りますが,依然,回転数に変化はありません。
 数周回していると,スーッとエンストしました。回収してチェックしますが,異常は見られません。再度走らせると,数周ほど快調に周回して,やはりエンストします。止まる寸前でも異常は感じられませんでしたが,念のためニードルを15度戻したところ,エンストは収まり,順調に走ります。
 どうも,この燃料は絞りすぎた時,なんの前ぶれもなくスーッとエンストさせる,ニードルの判りにくい燃料みたいです。ただ,ピーク域の幅が非常に広いので,少しずつニードルを絞って,体感的にパワーに変化がなくなったところで使用すれば問題はないようです。この状態では,従来と全く変わりなく走ります。
 走らせた感じでは,パイプイン後の伸びも従来通り,素直に回転が上がって艇速が伸びます。オイルが少ないことが問題になる様子はまったくありません。オイルが少ないことで,高回転域がより伸びる様子も特別には感じられず,まったく普通の30%ニトロ燃料です。  21級,46級と排気量を上げた場合や,慣らしからこの燃料を使用した場合にどうなるかなど,まだ解らないことが多いのですが,今回,計3リットルほど走航させた限りでは,問題は見られませんでした。

エンジンにはまったく問題なし

 エンジンにはプラグ切れを含め,全く問題は発生しません。エンジン内部を見て,ベアリングに違和感の発生,コンロッド両メタルの異常,ピストンのキズなど一切発生していません。小排気量のエンジンでそれなりの回転数(24000rpm)以下で使用するには,まったく普通の30%ニトロ燃料として使用できそうです。
 オイルが少ないことによるメリットとして,当然のことながら煙と排油の少なさには驚きます。エンジン・ルームの汚れは従来に比べれば1/3程度ですし,チューンド・サイレンサー内に溜まる排油も少量です。
 排油による環境汚染?は大分少ないでしょう。ただし,排気中のその他の酸化物質は従来通り排出されていますので,換気は十分に必要です。
 新品のエンジンをブレークインする場合,排気量を上げた21,46についても機会があればテストしたいと考えています。模型用エンジンの排気ガスが,環境に対してどの程度悪影響を及ぼすのかは解りません。しかし,世の中の流れがエコに傾いてる以上,社会的批判を受ける前に取り組んでいくことが大切だと思います。その意味では,低オイル化に取り組むことは,その一歩として大いに評価できるのではないでしょうか。
一番気が付く点は排煙がとても少ないこと。

4サイクル・エンジンの排気音が澄んだ音質になり,抵抗なく回っている感じです。

浅川 実 氏

1.機  体:CAP232‐40(京 商)
  エンジン:YS FZ‐53
  プロペラ:APC 12×7

 テストに使用した燃料は,低オイルの30%ニトロです。ニードルは1‐1/4回開いていましたが,約1/4回ほど絞りました。地上での回転数は10300rpmで,今まで使っていた燃料と変わりません。低オイル燃料の方が最高回転のピークが分かりやすいと感じました。



2.機  体:ウィークエンド・スペシャル(アイエム産業)
  エンジン:SAITO FA−80GK
  プロペラ:APC 13×8

 ニードルは約5回転開いていましたが,約2回ほど絞りました。地上での回転数は9500rpmで,本機も今まで使っていた燃料と同等の回転が得られました。
 以上のように,今まで使っていた燃料から低オイル燃料に換えても,ニードルを絞り込むだけでスロー調整などは特に必要ありませんでした。スロットルのレスポンスも良くなり,アイドリングも安定しています。地上での調整中にも感じましたが,実際にフライトして一番に気が付く点は,排煙がとても少ないことです。最初は違和感(排煙が出ていないとニードルを絞りすぎたのかと不安になる?)を感じるかもしれませんが,環境への影響を考えると,これは大変良いことだと思います。
 気になるパワーの点は,ニトロの量が同じということもあり,私が今まで使っていた燃料と同等,いや上がっているかもしれません。オイルの量が減ったことでエンジンの排気音が澄んだ音質になり,抵抗なく回っているという感じです。
 「ラジコン技術」誌上でも多数の方々が低オイル燃料のテスト・レポートを報告されていますが,ニードルを締め込む具体的な数値などについては使用するプロペラのサイズによっても変わり,またニードルのテーパー比もメーカーによって違いますので,あくまで参考にして頂き,実際に皆さんが使用される条件下で調整して下さい。
 日本科学模型安全委員会が環境問題を真剣に考え提案した,この低オイル燃料を各競技団体が賛同し,日本選手権大会で参加選手に使用を義務づける動きがあり,これに追従して,各燃料メーカーから続々と低オイル燃料が発売されると聞いておりますので,皆さんもぜひ,この環境にやさしい燃料を使ってみて下さい。
充分な冷却効果に,非常に驚きました。

飛行の全てにわたりフィーリングが良く,排油が極端に少なくなった。

新階 和哉 氏
 低オイルタイプ燃料のニトロ30%をテストすることができましたので,その感想を述べてみます。
 今まで使用しているニトロ30%ヘリ用燃料のセッティングのままテストを始めました。同じニードル・セットからスタートしたところ,メインローターがホバリング回転数に達せず,離陸ができない燃料の濃さでした。注意深く少しずつメイン・ニードルを絞ることにします(このときニードル開度は1‐5/6回)。何回かに分け,絞り1‐1/2回になったところでエンジン回転が低いと感じられましたので,スロットル・カーブをキャブが開く方向に調整しました。アイドリングからホバリング同転数に至るまでのもたつきも見られたので,スロー絞りを10分ほど薄く調整し,ホバリング状態になりました。
 通常,音と回転とレスポンス,それに排気ガスを見てホバリングにおけるニードルを判断していますが,排気ガスが驚くほど少なく,少し戸惑いました。上空に行く前に少し不安もあったので,ホバリングでアイドル・アップに入れ,約15秒,高回転の様子を見ることにしました。ノーマル状態に戻しエンジンの状態を確認したところ,すぐにホバリング回転に落ち,ニードルの甘さを感じたので少々安心しました。上空テストに移ると,ニードルの甘さにもかかわらず煙は驚くほど少ない。レスポンスが少しもたつき,排気音もイマイチですが,一般燃料と同じようなフィーリングで飛んでいます。この時点でハイニードルが約50分開いていたので,30分まで絞り込む。スキッとしたイメージと滑らかな排気音になり,パワーも充分となったのでロールを行ってみました。ピッチ抜きをしたとき若干の回転落ちを感じたので,アイドル・アップ量を少し上げ改善しました。エンジンのヒート具合を確認するため,ただちにホバリングを試みたところ,全くホバリング回転数は変わらず,ニードルを絞ったにもかかわらず充分な冷却をしており,非常に驚きました。
 テストのまとめとしては

  1.すべてのニードルを20〜30%くらい絞り込む必要があった。
  2.それに伴いスロットル・カーブも若干上げるように変更。

 以上2点の調整のみで何ら問題なく,思ったより簡単にセッティングができました。飛行の全てにわたりフィーリングが良く,排油が極端に少なくなり,ヘリの世界に大きな変化が生じる好印象を受けました。

●テスト機/三和カルト・ゼウス   ●使用エンジン/YS61 ST‐2
圧倒的に汚れが少ないことですね。

そして、なによりの収穫は、環境対応の一端を担っているという意識が持てたことでした。

鈴木 弘人 氏

まずは環境保護

 「ラジコン技術」2月号の「RCヘリコプターの環境を考えよう」の欄で,田屋氏がテストされた低オイル燃料の記事を読ませていただきました。
 この内容は,主にヘリ特有の飛行条件中の環境問題として書かれていました。たとえば,芝や草の枯れの問題とか,ホバリング演技中の刺激臭とか悪臭問題です。しかし,高く遠くを飛ぶ飛行機には,一見無関係と思いがちです。世の中の「環境問題対応」の多くがそうであるように,少しだからとか,自分には影響ないという考え方は当然間違っていて,生活における行動ひとつひとつの中に,「環境を考える」という意識を常に持つことが重要であるとされています。今の時点でやれること,やるべきことを実践することが重要なのです。
 燃料の低オイル化の方向性も飛行機屋にとっては「どんなメリットが?」と思うとき,ヘリコプターのように明確な回答は難しいのですが,環境保護の方向性として受け入れるべきものと認識しました。


ヘリコプターとの違いは…

 前置きが長くなりましたが,飛行機フライヤーの私は,この田屋エンジニアリング製の燃料で,飛行機,主にスタント機に対する適応性を探ってみました。使用した燃料は,ニトロメタン15%,オイル8%のものです。
 その前に,ヘリとの違いを推測しておきます。

  1. ヘリよりもパワーを使わない状態が多い。すなわち,セッティングがシビアではない。
  2. 最近のF3Aスタント機は,ヘリのように絶対パワーを要求しない,すなわち,パワーはそこそこで差し支えない。
  3. エンジン・スローからの回転の立ち上がりの負荷のかかり方がヘリと違う。飛行機ならではのアンマッチを誘うかもしれない。

 使う前に思いついたのはこんなものですが,早速手持ちの機体を使ってテストしてみました。
 テスト機はOS140RX‐FIを積んだF3A機,エンヤ45を積んだ中型スタント機,YS53FZを積んだF3A機です。
 まず,OS140RX‐FI(フュエル・インジェクション)では,インジェクターの燃料粘度との相性があるらしく,15〜20%オイル選定となっていますので,そこを外れると良くないかも? と危惧していました。しかし,結果的に5フライトほどしましたが,とりあえずエンストはしませんでした。パワー感覚については,もともと余裕で使っていたため,差を体感するに及びませんでした。やはり,違うのは機体の汚れです。おどろくほどに油まみれにならない。そこが一番のメリットでした。
 次のエンヤ45では,ニードルの絞り具合に差が顕著に現れました。確か,前に普通の燃料でテストしたとき1回半ぐらいであったはずが,1回そこそこまで絞りこめました。そこまでのニードル開度では,全体流量に対するニードルひとこまの分解能力が低くなります。その分,セッティングがシビアになりました。そういうところは,若干のコツを必要とするところではないでしょうか。それでも,慎重にニードル調整すれば普通に扱えました。今後,低オイル燃料が主流になるのであれば,エンジン・メーカーもそれに合わせたセッティング幅を広くとれるキャブ設計の余地があるのかもしれません。
 YS53についてはニードルを若干絞った程度で,普通に受け入れられました。もちろんエンストもしませんでした。


燃料メーカーの見解は?

 この3機を4リットルの燃料を使い切るまで,といっても45クラス2回,YS53を1回,残りOS140‐FIを6回ほど飛ばした印象です。
 まとめると,飛行機にとって最大のメリットは「汚れが圧倒的に少ない」ことでした。パワーについては,差が出るほどには感じませんでした。
 そして何よりの収穫は,環境対応の一端を担っているという意識が持てたことでした。
 ただ,最後にひとつだけ注文があります。いくつかある日本の老舗燃料メーカーの,今に至るオイル量を決定した“いきさつ”も踏まえて,低オイル燃料に対する見解も聞いてみたいものです。
スペシャル・チューンド・エンジンに変身。

1年以上も使用したノーマル・エンジンが、チューンド・エンジンもどきに変身しました。

国井 信 氏
 テスト機はヒロボー・シャトルです。現在までは通常のニトロ30%ヘリ用を使用していました。この時の設定はメイン・ニードルが1‐1/4回,スロー絞りはOSの標準設定のままでした。コレクティブ・ピッチはノーマルのホバリングで+4.5度,アイドル・アップ−1でハイ側が+8度,ロー側が−6度です。
 今回使用した低オイル燃料は,ニトロ30%のものです。最初に気がついた点は,燃料をポンプで注入する時に手回しの速度をゆっくりめにしてください。オイルが少ないためスムースに入り,タンクのオモリがあばれて,プレッシャー側に燃料があふれてしまいます。  低オイル使用のため,メイン・ニードルを1回まで締込んで最初のエンジン・スタートをしたところ,素直にアイドリングをはじめ,思ったより簡単だなとの印象を受けました。
 ホバリングの回転を計ったところ1,600rpmで,以前の1,450rpmより150rpmくらい上昇しました。
 上空のアイドル・アップ時は約2,000rpmくらいで,以前の1,800rpmより200rpmくらい上昇しました。確実にパワー・アップしていることが分かりました。これですと,ニトロを15%にしても十分ではないかと思います。
 排気の煙は確実に減少しており,ターンのために機体が離れた時は少し不安になりました。
 10回ほどでエンジンを下ろし点検したところ,カーボンの付着が少なくベトつかない感じです。
 まだフライト数が少なく耐久性等は分かりませんが,オイルが20%以上必要であるとの固定概念は変えなければならないようです。
 正直なところ,新しい演技や燃料のテスト等は不安がありますから,まず32クラスからとなります。OS32SXは非常に良く出来たエンジンで,条件の受け入れ幅が広いと思います。さらに60,46エンジンでも使用してみたいと考えています。

●エンジン OS32SXリング
●ブレード 全長550mm ハイプロ・ジュニア・スーパー
●プ ロ ポ Futaba1024ZH

メリット、飛行後のメンテナンスが楽なこと。

OS15LAでは約1/2回転弱、絞り込むとによって最高回転数になりました。

高橋 邦夫 氏
 環境問題などから,最近「低オイル燃料」が話題に上がっています。私も試用する機会に恵まれましたので,早速テストしました。
 私はいつも小さいエンジンを扱っていますが,今回はOS15LAを使用しました。燃料も通常15%程度のニトロを使っていますので,比較するため,同様のニトロ含有量の低オイル燃料を使用しました。
 機体は4月号に掲載のFUMI‐Specialです。
 ニードルは,今までの本誌に書かれているように通常の燃料使用時よりも絞りこみが可能でした。15LAでは約1/2回転弱絞り込むことにより最高回転数になりました。APC8×4と8×5では,どちらも回転数がアップしました。特にピッチ4では格段の回転数アップとなり,ちょっと回りすぎの感がありました。やはり,通常の燃料と同様にピッチ5が引きも良く,回転数も若干上がって一番使いやすかったと感じています。MK8×6では,若干の回転数ダウンが見られましたが,通常の飛行では問題ない程度ですので,そのぶん騒音が低くなることを考慮すれば,十分なパワーといえます。
 私はサンデー・フライヤーですが,今回の低オイル燃料も,今までの燃料と比べても何の遜色もなく使用が可能であると感じました。また,オイル分が少ないだけ機体の汚れも少なくなり,飛行後のメンテナンスが大変楽であることも,私にとって大きなメリットであると感じました。
 帰宅してからタンク内部を見てみましたら,今までですと排気プレッシャーのもどりによる薄茶色のツブがいくつも付いていたのですが,低オイル燃料の場合,タンク内部が非常にきれいであったことを付け加えておきます。

プロペラ使用燃料回転数使用燃料回転数
APC8×4オダネル15%13,800rpm低オイル15%14,940rpm
APC8×5オダネル15%12,900rpm低オイル15%13,020rpm
APC8×6オダネル15%11,040rpm低オイル15%10,920rpm
模型用燃料のオイル分の少量化は良いことだ

燃料の低オイル化の重要性は非常に大きい。
今後、この趣味が認められるためにも絶対に必要だと思う。


村山 正 氏

 模型用燃料に含まれる。潤滑オイルの低オイル化の重要性は非常に大きな問題です。これからの社会において。この趣味が認められるために、絶対に必要なことと思います。だからこそ、今後の研究成果によって、さらに良いエンジン、燃料が生み出されることを大いに期待します。
 こうした低オイル燃料を私自身や周りの者がテストした限り、いままでのところ非常に良い結果が得られています。しかしなお、実績を積み重ねていく必要性があるでしょう。実績は一朝一タには碍られず。地道な努カでのみ達成できる目標です。
 限られた狭い場所で運用される機会の多い、RCヘリやRCカーなどでは。低オイル燃料の利点は数知れず、RCカーの場合、すでに低オイル燃料が長年使われている実績があると聞いています。私どものように競技会を運営する立場の者にとっては、何よりも実績が必要です。競技会に参加する選手たちにとって、もっとも関心が強い問題はエンジンに関することでしょう。選手自身の納得を得られることが重要となるからです。とくに、低オイル燃料を競技会における使用燃料として推奨するには、上級者による年間を通じた数多くのテスト結果が必要であり、実績を上げる必要があると思われます。
 ところが、実際の使用者である選手たちは、春から夏の期間は競技会に忙しく、テストに当てられる時間が非常に少ないのが実情です。燃料の研究とは、選手のように何十リットルと使って、初めて成果が得られると思います。1年を通じたテストを行うことで、さらなる良い研究結果を得て、今後の低オイル燃料がより一層、高性能化することを期待します。
澄んだ排気音で、引きもグッド!

清水 信一 氏
(「低オイル・グロー燃料と安全フライトの集い」参加者)
 エキスパート級にチャレンジ中。思ったよりもハイ、スローとも安定しているし、排気音が澄んできれいな感じです。低オイルでは初フライトだったので、ニードルを絞りすぎた感じでしたが、上昇の引きもまずまずで「これは使える!」という確信を持ちました。排気がきれいで、ウエスでサッと拭くだけでOK!従来燃料との切換も問題なさそうです。

機  体   タイチ60       ニ ト ロ   23%
エンジン   YS91FZ      ヘ リ 歴   3年
オーバーヒートの心配はほとんどない

千葉 典裕 氏
(「低オイル・グロー燃料と安全フライトの集い」参加者)
 ニードルの調整自体はそれほど難しくないですね。絞りすぎても体感できるので安心です。オーバー・ヒートの心配もなく、汚れがすくないのにはびっくりしました。燃費は従来燃料と大差なさそうですね。

機  体   イーグル2       ニ ト ロ   23%
エンジン   OS61SX-H      ヘ リ 歴   8年
スロットルの立ち上がりが良い

小山内 洋一 氏
(「低オイル・グロー燃料と安全フライトの集い」参加者)
 ホバリング域でのスロットルの立ち上がりが良いですね。排気が少なく、上空での違和感はまつたくありません。自分のスティック感覚に合わせて調整します。排気のベタつきなどはほとんどありません。

機  体   エルゴ46       ニ ト ロ   23%
エンジン   OS46        ヘ リ 歴   1年半
飛行場をクリーンに保てそうですネ

星野 昇 氏
(「低オイル・グロー燃料と安全フライトの集い」参加者)
 ニードル調整は、それほど難しくないようです。ホバリングは煙が出ず、飛行が滑らかでずか、上昇がややあまい感じを受けました。飛行場をクリーンにするためにもぜひ使っていきたいと思います。

機  体   マイスター          ニ ト ロ   30%
エンジン   OS61SX-WC        ヘ リ 歴   10年
ベトつきと煙が少ないのが一番

栗田 善功 氏
(「低オイル・グロー燃料と安全フライトの集い」参加者)
 もちろん低オイルは初めてです。もう少し使ってみないと最終的な結果は出せないと思います。競技会に出たことはありませんが、排気のベタつきと煙は非常に少ないですね。これはイイですよ。

機  体   エルゴ60FAI          ニ ト ロ   15%
エンジン   OS61SX-WC          ヘ リ 歴   8年
4Cエンジンの場合は低ニトロの方が好調

使い始めは夏場に多少の不安はあったのですが、
今では気温35度の猛暑でギンギンに絞って飛ばしています。


斉藤 浩一 氏

 20年以上前の話になりますが,パイロン・レース用としてニトロ・メタンの混合比75%の燃料を製造・販売したことがあります。当然,他の成分は圧縮されるわけで,確かメタノールと添加剤で12%,潤滑油が13%だったと記憶しています。当時の資料を失くしてしまったのが残念です。ただし,この時は目的が違うため,高い粘度で燃えにくいオイルを使用したので,排煙はあまり変わりませんでした。その後,そのオイルは塗装面を変色させることが分かり,またニトロ・メタンの急騰により,製造を中止してしまいました。
 最近発売になった話題の低オイル燃料は,環境問題の一環としての産物と認識しています。エンジンカー用として以前より使われている配合のようですが,空物関係ではあまり関心がなかったようです。と言うより,エンジンを大切に扱うという観点から避けていたのかもしれません。
 新し物好きの我らグループは早速使用を始めました。紹介ビデオや先輩諸兄の説の通り,飛行中の排煙は少なく見えない程です。排煙を見てのニードル・チェックはできなくなりました。排煙が少なくなったからか,機体の汚れは極端に減ります。
 使用方法といった大仰なものはありませんが,ニードルとスロー絞りは,絞り込む必要があるようです。燃料の粘度が下がったせいなのでしょうか。使い始めは夏場を過ごさなければと,多少の不安はあったのですが,現在では気温35度の猛暑のなかでギンギンに絞って飛ばしています。エンジンの冷却にも効果があると聞いていますが,比較していないので分かりません。燃焼学上の理論なのでしょう。
 最近,私の店に他店において「低オイル燃料はエンジンが不調になる,または壊れる」と言われたと,質問に立ち寄るお客様が度々あります。商売上の問題もあるのでしょうが,正しく応対して欲しいと思います。何にしても,諸外国の後に付いて来たラジコン関連用品の中で一歩リードしたとの思いは楽しい限りです。
 ニトロ・メタン含有量についても書き添えます。低オイル燃料を使い始めた当初は,多少懐疑的な視点からかパワーが落ちたような気がしました。普段は15%を使っていますが,ランクを上げてみることも考えました。しかし,その後の比較で同等の%で遜色のないことが分かりました。
 圧縮比の高い4Cエンジンを使う場合などで,低ニトロの方が好調の時があります。選択肢の増えることは有り難いので,メーカーの皆さん,検討してください。
 使い始めてまだ1カ月程度なので,細かいデータやエンジンの耐久については把握していませんが,現在のところ何の問題も生じていません。続けて使っていきたいと思います。



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